財政健全化を求める市民の会とは?――日本の実質賃金は下がり続けている。
失われた30年――誰しも一度は聞いたことのあるフレーズではないでしょうか?私たちは、その核心は、実質賃金が1997年をピークに下がり続けていることではないかと考えています。1990年を100としてみた場合、現在の賃金は85程度と約15%も下がっています(図1)。なおこの間、先進国ではほとんどの国で賃金が上昇していました。実質賃金が増えなければ、消費が伸びず経済が活性化しないことは誰が考えても明らかでしょう。ではなぜ賃金は減り続けてしまったのでしょうか?それは、バブル崩壊とそれに続く金融危機により、行き詰まった企業は人件費を削り、手取りの減少により国民は消費を控え、さらに経済活動が縮小し企業の利益が減少し、企業はさらに人件費を削らざるを得なくなるという悪循環に陥ったからでした。こんな日々が1990年代から今に至るまでずっと続いていれば、誰しも不安になりますよね?
「明日への不安」「未来への不安」。それに加え日々ニュースで接する少子高齢化による人口減少、一人当たり1000万円にも上る国の借金など、私たちはさまざまな不安を抱えながら生きています。
この不安を少しでも解消し、今をもっと楽しく生きることができる社会を作るための選択肢となるために、私たち財政健全化を求める市民の会(CAFS)は結成されました。私たちは、「2つの安心運動」により、少しでも将来への不安を感じずに過ごせる世の中を作りたいと本気で考えています。しかし、そのための道は長く険しいものとなります。日本の現状は、過去の政策のツケを払わなければならない段階に達してしまっているからです。以下、現在日本はどんな状態なのか?そして「2つの安心運動」とはどのようなものなのかご説明します。
持続可能な社会保障は、持続可能な財政から。恐れず言おう。消費税率引き上げは必要だ
日本の国債発行残高は年々増え続け、現在1000兆円を超えています(図2)。いわゆるアベノミクスの第一の矢=日銀の異次元緩和により、国債は安定的に発行され、国の利払い費も抑えられてきましたが(図3)、その実態は財政ファイナンス(中央銀行による国債引き受け)による財政的な延命措置でした。しかし、いよいよその限界が近づいてきました。日銀の植田総裁により、異次元緩和政策は2024年3月、ついに終了しました。日銀は巨額の国債買い入れを行っておらず、むしろ保有国債を徐々に減少させています。しかし、インフレは止まらず国民の実質所得は減少し続けています。2022年には1ドル120円台だった為替レートは、現在160円近くまで下落しており、輸入物価高騰によりインフレが続いています。本来であれば、日銀はさらなる利上げによりインフレを止めなければなりません。しかし、利上げにはさまざまな構造的な困難があり、一定水準以上の利上げは困難なのではないかという意見も見られます。さらに最近の与野党が訴える財政拡張的な政策をみると、国際社会の日本円に対する不信感は深まるばかりだと思われます。円は信用を取り戻さなければなりません。
その方法は何か。財政収支の黒字化を目指し、少しでも債務を削減していく姿勢を国の内外に示すことです。
では財政収支をどう黒字化するか。それは消費税の税率引き上げしかありません。消費税は1%の引き上げで約3兆円の税収を見込めます。法人税・所得税の引き上げで、これほど効率よく、景気に左右されずに税収は得られません(図4)。現在財政収支の赤字額は11兆円ほどなので、約4%程度の消費税の税率引き上げは避けられないと考えます。
もし財政が少しでも健全化し始めたら、報道でも大きく取り上げられるでしょう。この将来への安心感で、私たちは過剰に貯蓄をしなくてもよくなるかもしれません。2つの安心運動の一つ目は、この財政収支の健全化による安心を指します。
日本の消費税は世界と比較すると低い
もちろん、負担増を自ら望む人は少数でしょう。私たちも、本来であれば税金は低い方が良いと思っています。ただ、国際的な水準で見た場合、日本の消費税は低いと言わざるを得ません。日・米・欧を含め38カ国の先進国が加盟する国際機関であるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で比較してみると、統計のある36カ国で比較した場合、日本の付加価値税(消費税)の対GDP比は4.2%で36カ国中31位です(図5)。(税収は通常その国の儲け=GDPと比較し、儲けのうちどれくらいを税金として納めているかで各国比較します)。その他の主要な税金である基幹三税(付加価値税、所得税、法人税)を併せてみても対GDP比は13.8%で36カ国中29位です。政府は、バブル崩壊後個人消費を活性化するために、所得税の減税をすすめ消費税を導入しました。しかし、それを上回る規模で歳出の増大が進んでいるため(図6)、今所得税を増税しても、大きな税収が見込めないのです。現に1237万円以上の所得の人の所得税を1%引き上げたとしても、税収は1400億円程度しか見込めません。また所得税や法人税と異なり、消費税は消費に対してかかる税金のため、景気に左右されることがありません(図4)。世界の先進国で共通する少子高齢化に対応するため、EUでは加盟に15%の付加価値税導入が必須とされているほどなのです。
日本に住む私たちは、みな一つの家族です。
おそらく賢明な国民のみなさんは気づいているのではないでしょうか?このままでは日本は破綻するーー。だからこそ、国に頼らず、なるべく日々節約し、給料が上がらない中汗水垂らして懸命に働き、慎ましく暮らしているのではないでしょうか。
人生にはいろいろなときがあります。いいときもあれば悪いときもある。小さい子どもを育てるときもあれば、高齢の家族を介護するときもある。自分が病気で苦しむときもあれば、愛する家族と死別するときもある。結婚して子どもをたくさん授かる人もいれば、生涯独身で過ごす人もいる。多様な暮らし方が尊重される世の中で、全ての人がいついかなるときも、周りの人の協力が得られるとは限らない。いざ自分が働けなくなったとき、生活に困窮したり、さらには野垂れ死にしないために、私たちは助け合って、支え合って生きていくしかないのです。日本という国に生まれた以上、私たちはみなそこで暮らす家族です。負担を分かち合い、互いに助け助けられの社会を持続可能な形で築くことこそが、全世代の安心に繋がるのだと思います。言い換えれば、持続可能な財政を作ることこそ、未来の安心に繋がり、結果として消費も活発となり、一番の景気対策にもなるのではないでしょうか。
そのために、私たちは、まず財政収支の黒字化を目指しますが、同時にさらなる持続可能な社会保障作りを目指します(これが「2つの安心運動」の二つ目です)。それは、全ての人間が、人間としての生活を公的に保障された公助の社会です。日本そのものが、家族である。国民そのものが、家族である。国そのものが、家であり、国民そのものが、国家であると言う考え方です。誰に頼らずとも、安心して生きていくために必要な、医療・介護・障害者福祉無料化は消費税6%18兆円の値上げで可能です(つまり財政収支の黒字化と合わせ20%程度までの消費税率引き上げが必要となります)。消費税は逆進性の強い税金(所得の少ない人ほど負担が大きくなる)だと言われていますが、それは給付の充実でカバーできます。例えば、大学授業料100万円無償化は、年収1千万円の人には10%のメリットですが、年収200万円の人にとっては50%のメリットがあるのです。
また、所得税や法人税は主に現役世代に対する課税となりますが、消費税は消費者全てに負担を求めるものなので、その点で言えば全ての世代へ負担を求める公平性があるとも言えます。
誰も言わないことを言う勇気
財政健全化による将来不安の解消、財源を伴う社会保障制度の充実により、何があっても少しでも不安を感じることなく過ごせる社会。この2つを実現する運動を私たちは「2つの安心運動」と名付けました。ただ名前は重要ではありません。このような社会を作ることができるかどうかです。与党は、アベノミクスを通して日本経済に時限爆弾を仕込みました。今後の国家運営を担う資格はありません。同様に野党も、目先の議席を優先するがあまり、消費減税など国民を欺こうとする政策を打ち出しています。これもまた国家運営を担う資格はありません。しかし、民主主義には選択肢が必要です。有権者は政党や候補者の中から自分の意見に合うものを選択しなければならないからです。今の日本に必要なのはこの選択肢です。現在の問題点を正確に認識し、分かりやすく国民に伝え、少しでも状況を改善できると思われる政策を提示する、その姿勢が問われています。「2つの安心運動」には、消費税率の引き上げなどすぐには国民の理解が得られない主張も入っています。日本は上向きの時代に減税を繰り返し、その後の停滞期にも負担増を避け借金で問題を先送りし、本来受けれなければならない痛みを避けてきたからです。そして今後も、既存の与野党は1議席でも自分の議席を守るために、本当に言わなければならないことを言わず、国民を欺き続けようとするでしょう。
私たちは違います。私たちは政治家になることが目標ではありません。日本を変えるという目標のために、その手段として政治家になろうとしているからです。そして、「2つの安心運動」が日本を再生させると信じています。
もちろん、国民から批判を浴びるような内容を含む政策を敢えて唱えることは怖い。そんなとき私は、ミャンマーの軍政に対し、街頭でデモを行う一女子学生の主張を思い出します。彼女は言いました。
「恐れる気持ちを乗り越えて、何かを成し遂げようと決意することを『勇気』と呼ぶのではないだろうか。時には何も変えられなく、自分たちが無力だと感じることもあるけれど、どんな努力でも革命につながる。」
今世界では、自分たちの住む社会を少しでも良くしたい、少しでも、今日より良い明日を作りたいと願う人々が、台湾で、香港で、タイで、ミャンマーで、ウクライナで、勇気を持って戦い続けています。それぞれの社会で問題となる内容、事柄は異なりますが、私たちも、より良い明日を作るために戦い続ける存在でありたい。革新につながる時代を築く、草莽の一個人たちでありたい。その思いを常に抱き続けています。
一人でも多くの人に、日本の危機的状況を理解いただく。そして一人一人が力を合わせて問題に立ち向かう。そうすると自ずと、社会は前に進むはずです。覚醒・団結・前進。今日より良い明日を作るために、私たちは前進し続けます。
みなさん、私たちと共に、時代の先駆者となり、観客ではなく主役として、二千年の日本の歴史に名を残しましょう。私たちなら必ず、成し遂げられるはずです。
●参考文献・ウェブサイト
- 河村小百合「中央銀行はもちこたえられるか」「中央銀行の危険な賭け」
- 池上彰「日銀を知れば経済がわかる」
- 明石順平「国家の統計破壊」「データが語る日本財政の未来」
- 井出英策「欲望の経済を終わらせる」
- https://www.fukuishimbun.co.jp/category/news-fukui/税・分断から連帯へ
- デービットアトキンソン「国運の分岐点」「日本人の勝算」
- https://toyokeizai.net/list/author/デービッド・アトキンソン
- ミャンマーの学生から送られた「手紙」 アフガンからの返信は…(毎日新聞) https://news.yahoo.co.jp/articles/20cd8e88e62852b397ee12e886f76abab64c9e51
- 25年度国債費、金利1%上昇なら30兆円突破=財務省試算で政府筋(ロイター) https://jp.reuters.com/article/jp-bond-rate-idJPKBN2JS29S
- 野口悠紀雄「日本経済入門」「世界経済入門」
- https://gendai.ismedia.jp/list/author/noguchiyukio